B!

事例紹介

Case Study

株式会社ヤマダヤ

ECと店舗データをつなぎ、半年でROAS600%超を実現―24ブランドを持つアパレルブランドのCRM設計

業種
支援内容

ダッシュボード

11

ROAS

600 %

F2昨対比率

20 pt 改善

予測モデル

誤差 3 % 以内

導入前の課題

1. 店舗とECのデータを横断的に活用できていなかった

実店舗とECの顧客データが分断され、購入後のアフターフォローが不十分だった
次の来店機会を生むコミュニケーション設計や、個々の顧客に合わせたパーソナライズ対応ができていなかった
ECの購買・お気に入り情報が店頭接客に活かされず、オンラインとオフラインをつなぐ導線も未整備だった

2. 接客が属人化していた

接客の質がスタッフ個人の力量や各店舗の文化に依存していた
接客ノウハウが全社の財産として共有されず、店舗間で再来訪率に差が生まれていた

3. CRMを経営に活かす発想が組織に根づいていなかった

CRMを単なる顧客情報管理と捉え、経営判断や全社戦略に活かす視点が欠けていた
「顧客データを起点に事業を考える」文化そのものが存在しなかった

選んだ理由

ヤマダヤという会社を深く理解したうえで、自社の価値と課題への仮説をデータ分析で検証し、優先すべき領域をステップごとに提案してくれたこと。
「ヤマダヤにとって何が必要か」を自社以上に真剣に考え、フラットな提案から実行まで伴走してくれること。
提案がデータ分析だけでなく、顧客インタビューや現場の肌感覚、言語化しきれていない想いまで踏まえて設計されている点。
先回りした動きでプロジェクトが止まらないこと。EC立ち上げ期から基幹システムのリプレイスまで、約6年にわたり事業の根幹を共につくってきた信頼関係があったことも背景にあった。

導入後の効果

■定量的な効果
継続的なコミュニケーション施策のROASが半年で600%に到達
リピート率(初回購入から2ヶ月以内の再来店・再購入率)が昨対比で平均20ポイント改善
初回→2回目購買のCV率が119ポイント改善、3回目への転換CV率も28ポイント改善
メルマガ受信許諾率が4ポイント向上
誤差3%以内の精度で動く売上予測モデルを構築し、施策効果を「予測と実績の差分」で定量評価できる体制が実現
■定性的な効果
NPS導入により顧客の声をリアルタイムで把握できるようになり、スタッフ名がバイネームで挙がる店舗ほど売上・定着率が高いという相関を発見。強い店舗の理由がデータで可視化された
ECのお気に入り機能をスタッフ・ブランド・店舗まで拡張し、EC・店舗双方の顧客で利用率が向上。店舗在庫のEC上での確認も可能になり、店舗とECの分断が顧客体験レベルでつながり始めた

株式会社ヤマダヤ

株式会社ヤマダヤは、1893年創業・名古屋市に本社を置く総合アパレル企業。生地の開発から企画・製造・販売までを自社グループで一貫して行う「糸からのモノづくり」を強みとする。ウィメンズウェアを中心にRADIATE、Aga、LASUDなど24のプロダクトブランドを展開し、全国のショッピングセンターを中心に約150の直営店舗とオンラインストアを運営。

インタビュー参加者

  • 山田 陸人 様

    株式会社ヤマダヤ 執行役員 経営企画・財務統括

  • 坂東 大毅

    株式会社Gene 代表取締役

まずはヤマダヤさんの事業内容と、現在のお仕事について教えてください。

株式会社ヤマダヤは、1893年創業、名古屋に本社を置く総合アパレル企業です。衣料品の仕入れ・販売にとどまらず、生地の開発から製造・販売までを自社グループで一貫して手がけるスタイルに強みを持ち、現在24種類のプロダクトブランドを展開しています。

私は、ヤマダヤの執行役員として、経営企画と財務を統括しています。

ヤマダヤの経営理念は、「ファッションでお客様の心を、豊かで潤いのあるものにする」というもの。

この理念が体現しているように、ヤマダヤの多くのお客様は、ヤマダヤのものづくりやサービスのカルチャーに深く共感してくださり、長年にわたってファンデい続けてくださる方ばかり。そのお客様との関係性こそが、私たちの最大の財産だと感じています。

次期社長として会社全体の方向性を考えていくなかで、ヤマダヤのお客様との関係をより長く続く関係性を会社として築いていくCRM・顧客戦略の重要性を感じ、現在はCRM領域に注力しています。

── CRMにおいてどんな課題を感じていましたか。

24のブランドの店舗・ECをもちながら、それらが結びついた一貫した顧客施策を打てていない状態でした。

冒頭で述べたように、ヤマダヤはリピート率も定着率も高く、長年通ってくださるファンのお客様がとても多い。一方で、新しく会員のお客様への継続的なフォローも、長年支持してくださっているお客様への最適なアプローチも仕組みとしてもてていませんでした。

具体的に、当初の課題感は大きく3つありました。

1点目は、店舗とECのデータの横断的活用ができていなかったこと。

実店舗とECサイトの顧客データを十分に活用できておらず、購入後のアフターフォローに課題がありました。

実店舗については、次の来店機会を生み出すコミュニケーション設計が不十分で、個々のお客様に合わせたパーソナライズなアプローチにも手が回っていませんでした。常連のお客様が気になっているブランドや商品を把握し、ニーズに合わせた仕入れを行うといった対応や、新商品・スタイリング情報・在庫状況など、お客様にとって有益な情報を届ける仕組みも、当時は十分とはいえない状況にありました。

ECサイトについては、購入されたお客様に「店舗にもぜひお越しください」とご案内する導線が整っておらず、オンラインとオフラインをつなぐ接点をうまくつくれていませんでした。

加えて、ECサイト上でのお客様のお気に入り登録や行動状況を現場スタッフへフィードバックする仕組みも未整備で、データが店頭での接客に活かされていないという課題も抱えていました。

2つ目は、接客の属人化です。

お客様への接客対応が、スタッフ個人の力量や各店舗の文化に大きく依存しており、品質にばらつきがありました。お客様への声かけの仕方、ヤマダヤのお洋服の提案、購買体験を豊かにするための接客ノウハウが、担当スタッフや店舗ごとに属人化していて、会社全体の財産として共有されていなかったのです。

その結果、ヤマダヤの魅力を伝えるフォローの質が店舗によってまちまちとなり、再来訪率にも店舗間で差が生まれていました。

3つ目は、 CRMを経営に活かすという発想が、組織に根づいていなかったことです。

1・2つ目のような課題が生じていた背景には、そもそも「顧客データを起点に事業を考える」という文化がなかったという前提があります。ロイヤリティプログラムを導入してまだ数年で、CRMをお客様の単なる情報管理にとどめて捉えており、それを経営判断や全社戦略にどう活かすか、という視点が欠けていました。

そこで、ヤマダヤという会社を深く理解したうえで、自社の価値と課題への仮説をデータ分析で検証し、優先すべき領域をステップごとに提案してくれたGeneさんとともに、CRMプロジェクトに取り組むことを決めました。

── プロジェクトでは具体的にどんなことに取り組まれましたか。

 Geneさんと取り組んだCRM施策は広範囲にわたりますが、当初はCRMマーケティングの基礎的な施策から着手しました。

具体的には、

①すぐに成果が出る施策を積み上げ、効果を経営層・現場層に実感してもらう
②N1インタビューとデータ分析を通じて提供価値を言語化する
③ロイヤリティ別のアプローチを設計する
④店舗とECをつなぐ体験の設計

という4つのステップを踏みながら、ヤマダヤ全体のCRM構想を組み立てていきました。

1. すぐに成果につながデジタル施策を実施

 最初に取り組んだのは、初回購入のお客様へのアフターフォローと、ロイヤリティ別に適切なタイミング・内容を踏まえたコミュニケーション設計です。

このプロジェクトは部署横断のチームで進めるため、まず関係各所に「この取り組みには意味がある」と実感してもらう必要がありました。リアル店舗を絡めた施策は、現場との調整や浸透に時間がかかります。そこで、まずはデジタルで完結する施策に絞って実行することにしました。

具体的には、初回購入のお客様に対して、ヤマダヤのブランド・サービス・コーディネートを知っていただくためのオンボーディングプログラムの設計です。お客様の状況や趣味嗜好によって届けるべきコミュニケーションのタイミングと内容は変わるため、お客様ごとのライフサイクルに応じたパーソナライズシナリオを構築し、実行しました。

2.「なぜヤマダヤが選ばれているのか」を言語化する

 一定の成果が見え始めた段階で着手したのが、「ヤマダヤがお客様に支持されている理由」の言語化です。過去のお客様インタビューの深掘りと、店舗スタッフへのインタビューを重ねながら、「どんな価値を感じてヤマダヤを継続的にご利用いただいているのか」を丁寧に言葉に落としていきました。

「なんとなく好き」で来てくれているお客様の気持ちを言語化することで、届けるべきメッセージが初めて定まります。以降のすべての施策は、ここで整理した価値訴求軸をベースに設計しています。

3.ロイヤリティ別のアプローチを設計する

 価値訴求軸が定まった後、続いて取り組んだのが、お客様一人ひとりの状況に応じたコミュニケーションを仕組みとして自動で届ける体制の構築です。

初めてヤマダヤで購入してくださったお客様には、ブランドの世界観や他のコレクションを紹介するコンテンツを自動でお届けします。2回、3回とご来店いただいているお客様には、好みのブランドの新商品情報をいち早くご連絡。しばらくお買い物が途絶えているお客様には、過去に購入いただいたブランドの最新コレクションやスタイリングを来店のきっかけとしてお届けしています。購入後のお礼や、購買履歴をもとにしたおすすめ商品のご案内も、同じ仕組みの中で動いています。

単なるメール配信ではなく、「今このお客様に、ヤマダヤとして何を届けるべきか」を設計し、継続的な対話が生まれることを意識した仕組みです。

4. ダッシュボードと予測モデルの構築

 次に、顧客データを経営判断に活用できるよう、ダッシュボードを整備しました。

それまでヤマダヤのお客様をロイヤリティ別に把握する仕組みがなかったため、まずセグメントを定義しました。そのうえで、ロイヤル顧客・新規顧客・休眠顧客など、顧客ランク別に観測できる切り口を11種類のダッシュボードに落とし込みました。
これにより、どのロイヤリティ層への打ち手を強化すべきか、売上の増減の理由を顧客起点で把握できるようになっています。

さらに、年間売上の予測モデルも構築。
現状の購買状況から「どの程度の売上に着地しそうか」を捉えることで、CRMの継続的な取り組みによる効果を定量的に計測できる体制が整いました。「現在、どのお客様が離れかけているか」「どの層にどんな施策を打つべきか」を、経験や感覚だけでなくデータを見ながら判断する習慣が、組織のなかに育ち始めています。

5.店舗とECをつなぐ体験の設計

最後に取り組んだのが、店舗とECをつなぐ施策です。

まず、お客様満足度を数値化するNPS(Net Promoter Score)を設計し、定点的にデータを取得・モニタリングする体制を整えました。これまでもCS部門が主導でVOC(Voice Of Customer:顧客の声)を社内や店舗にフィードバックしていましたが、購入直後のサンクスメール内に意見募集の文を加えることで、より多くのお客様からご意見をいただけるようになりました。

その結果、スタッフ名が挙がってくる店舗はデータ上でもお客様の定着率が高いことが判明するなど、売上だけでは見えなかった店舗の実力を、お客様の声で可視化できるようになっています。また、店舗スタッフがお客様一人ひとりに合った提案を行えるツールも構築し、イベント時の品揃えの最適化にもつなげています。

ECサイト側でも、お気に入り機能の拡張や店舗在庫との連携など、オンラインとオフラインの体験をシームレスにつなぐ機能の企画・実装まで進めました。ECは「オンラインの店舗」にとどまらず、お客様がリアル店舗に来店していない時間におけるヤマダヤとの接点です。その接点から来店機会を生み出す取り組みを、着実に実現しています。

── プロジェクトの成果について教えてください。

正直、想定を超える成果が出ました。

最も重要な指標であるお客様のリピート率は、初回購入から2ヶ月以内に再来店・再購入してくださるお客様の割合の昨対比が平均20ポイント改善。リピート率のトレンドが明確に変わったことを実感しています。

メールを起点とした転換施策の効果も顕著で、初回購入者が2回目の購買に至るCV率が119ポイント改善、3回目購買への転換CV率も28ポイント改善しています。初回登録者のメルマガの受信許諾率も4ポイント向上し、お客様にコミュニケーションが届く全体母数が広がりました。

投資対効果で見ると、お客様への継続的なコミュニケーション施策のROASは、半年で600%に達しています。施策の効果が時間をかけて積み上がる性質を踏まえると、実際の投資対効果はさらに高い水準にあると見ています。

そして、この成果を測定できるようになったこと自体が、最も大きな変化かもしれません。構築した予測モデルは誤差3%以内の精度で動いており、「予測と実績の差分」によって施策の効果を定量的に評価できる体制が整いました。

CRMの評価は「メールに何人反応したか」「リピート率が何ポイント改善したか」という単発の数字に陥りがちです。しかしそれが最終的に売上にどれだけインパクトを与えたのかを、予測モデルを使って科学的に証明できるようになりました。「なんとなく良くなった気がする」から「効果が数字で証明できる」への、大きな転換です。

─ 印象的なエピソードがあれば教えてください。

印象的なのは、やはりNPSの導入によって、毎回の購買体験についてお客様の声を継続的に受け取れ、現場の実態をリアルタイムで把握できるようになったことです。

なかでも、NPSのアンケートのなかでスタッフの名前が「バイネーム」で挙がってくる店舗とそうでない店舗では、売上やリピート率が高い店舗に、明らかな相関があると見えてきたことは大きな発見でした。「あのスタッフがいる店はなぜ強いのか」が、感覚ではなくデータで見えるようになった。ここから明確化したのは、お客様の好みを把握したうえで、想像もしなかったファッションの提案ができているスタッフや店舗は、お客様から支持をいただいている傾向にあったのです。これは非常にインパクトの大きな指標の発見となりました。

── 機能面での成果はいかがでしょうか。

ECサイト上での「お気に入り機能の拡張」は、ECユーザーと店舗来店のお客様の双方で利用率が向上しました。

従来はお気に入り登録できるのが商品とスタイリングのみでしたが、スタイリングを投稿しているスタッフ・ブランド・店舗もお気に入りに追加できるよう機能を拡張。

お気に入りしたスタッフのスタイリングのみを一覧で確認したり、お気に入りブランドの新着商品だけを絞り込んでみたりと、お客様それぞれの「好き」に合わせた体験ができるようになりました。

また、お気に入り店舗の在庫は各商品ページですぐに確認できるほか、その店舗に在庫がある商品だけを一覧で見ることも可能になっています。

課題として挙げていた店舗とECの分断が、お客様の体験レベルで少しずつつながり始めています。

── 改めて、Geneと組んでよかったと感じる点を教えてください。

一言で言うと、「ヤマダヤにとって何が必要か」を、私たち自身よりも真剣に考えてくれる会社です。

24のブランド・店舗・ECという複雑な構造を持つヤマダヤ全体を俯瞰したうえで、「今何をすべきか」をフラットに提案し、実行まで伴走してくれます。しかもその提案は、データ分析だけでなく、定性的なお客様インタビューや現場スタッフの肌感覚、私たちが言葉にしきれていない想いまでをすくい上げて設計されている。

数字・現場感・私たちのビジョン、そのどれか一つに偏ることがない。だから「こうなったらいいな」と漠然と思っていたことが、Geneと取り組むことで具体的な施策になり、システムになり、数字で証明できる成果になっていく。そういう確かさを感じています。

── 仕事の進め方として感じることはありますか。

プロジェクトが止まらない、というのが正直な実感です。

意思決定に必要な情報の整理、現場への浸透、関係者間の調整 ── ヤマダヤ側でしか動けないこと以外は、Geneが常に先回りして動いてくれます。
限られた期間で全社横断のプロジェクトを前に進められたのは、SaaSを導入するだけでは得られない、Geneというパートナーがいたからだと思っています。

振り返ると、Geneさんとの付き合いももう6年になります。
EC事業の立ち上げ期から、システム開発・運用、会員システムの構築、基幹システムのリプレイスまで、事業の根幹をずっと一緒につくってきた、信頼できるパートナーです。

── 今後の展望について教えてください。

目指しているのは、お客様のファッション体験のすべてにヤマダヤ全体として関わり続ける会社です。

これからの日本、特に地方では、新規のお客様を増やし続けることが構造的に難しくなっていきます。だからこそ、今いるお客様のライフタイム全体に寄り添うことが、経営の中心に来なければならない。

服を選んでいる時間、買った後にコーディネートを楽しんでいる時間、またヤマダヤに足を運んでくれる時間 ── そのすべてに、商品で、スタッフで、ヤマダヤ全体として関わり続けていく。それが “オールヤマダヤ” という言葉に込めた意味です。

── 具体的にはどんな取り組みを?

具体的には、①非来店時のお客様との接点づくりと、来店機会の創出、②お客様へのスタッフの提案力の向上、③お客様のファッション体験を豊かにするサービス・機能の提供、といった3つの柱で進めていく予定になっています。

これまでのGeneさんとのプロジェクトを経て、弊社のCRM施策はようやくスタートラインに立った、というのが正直な感覚です。

システムができ、データが見えるようになりましたが、それはあくまで土台に過ぎない。これをどう事業全体の戦略に落とし込んでいくか、商品開発、店舗運営、ブランド戦略とCRMをどう一体化させていくか。それが、これからの本番だと思っています。

ファッションを通じてお客様の人生に関わり続ける会社として、”オールヤマダヤ” を体現していく。

その挑戦を、これからもGeneと一緒に続けていきたいと思っています。

原稿作成・編集 Gene広報 岩谷菜都美

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